研究概要 |
世界最小のイオンポンプであるバクテリオロドプシンは、最も研究が進んでいるポンプ蛋白質であるが、そのポンプ機構は解明されたとは言い難い。本研究では、光駆動プロトンポンプの動作機構を解明するため、機能転換を含めた蛋白質の変異、光駆動ポンプ活性の計測、そして申請者のグループが世界に誇る赤外分光法を駆使した網羅的な研究を古細菌型ロドプシンに対して行う。特に、古細菌に存在するロドプシンだけでなく、真核生物や真正細菌から新たに見つかった古細菌型ロドプシンを主要な研究対象に位置付ける。 本年度の研究実績として主に以下のものが挙げられる。1,真正細菌由来のプロテオロドプシンに対する赤外分光計測により、シッフ塩基近傍の水素結合ネットワーク構造を明らかにした(D. Ikeda, et. al., Biochemistry,2007)。2,バクテリオロドプシンを光センサーに変換した変異体の赤外分光計測により、センサー機能に重要なスレオニン残基の水素結合変化を観測した(Y. Sudo, et. al., J. Biol. Chem.,2007)。3,バクテリオロドプシンのD212N変異体でクロライドイオン依存的にプロトンポンプ活性に重要な強い水素結合を形成した水分子を観測した(M. Shibata, et. al., Biochemistry,2007)。4,光駆動プロトンポンプの中枢部分となるレチナールシッフ塩基を粘土を用いたモデル系に導入し、粘土の産地を変えることにより、吸収極大波長の制御を行った(Y. Furutani, et. al., Angew. Chem. Int. Ed.,2007)。5,バクテリオロドプシンに対する時間分解赤外分光法により、光反応中間体(LおよびM中間体)の形成過程での水分子の水素結合変化を実時間で計測した(V. A. Lorenz-Fonfria, et. al., Biochemistry,2008)。
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