シロイヌナズナのXTH遺伝子ファミリーのメンバーの中で、AtXTH28遺伝子だけが自動自家受粉の能力に寄与する雄蕊形成に寄与していることを明らかにした。AtXTH28遺伝子が欠損した突然変異体(atxth28)の花においては、自家受粉の効率が下がることにより、稔性が低下する。本研究によって、atxth28の花では、雄蕊の花糸が適切なタイミングで伸長していないこと、雄蕊が雌蕊から離れていること、葯の裂開面が柱頭に向いていないことが明らかになった。以上の3つの原因によって、atxth28では、生殖時期に葯と柱頭の空間的な位置が離れ、自動自家受粉ができないことが証明された。またAtXTH28遺伝子の詳細な発現解析を行ったところ、葯と花糸の接合部、花糸の維管束、花糸と花托の接合部で強い発現が確認された。以上の結果から、AtXTH28が、自家受粉のために必要な雄蕊の形態形成を担う細胞壁構築・再編過程で機能していることが明らかになった。また遺伝子発現プロファイル情報を利用して、AtXTH28遺伝子と共発現する細胞壁関連遺伝子を解析したところ、2次細胞壁構築に関わるセルロース合成遺伝子と協調的に働いていることが示された。 雄蕊形成におけるXTHの機能について、植物種間での普遍性を調べるため、シロイヌナズナとは異なる多糖類から成る細胞壁を持つイネのXTHを解析した。この結果、AtXTH28と同じXTH遺伝子サブファミリー(クラスIII)に属するOsXTH19が雄蕊の花糸に局在することが明らかになった。またOsXTH19がシロイヌナズナのクラスIIIXTHと同じ酵素活性を持つことをin vitroの解析で明らかにした。
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