研究課題
花粉の外壁を構成するエキシンは、その強固な性質により生殖細胞を保護するとともに、植物種に固有の構造により柱頭が同種の花粉か否かを認識する際にも役立つと言われている。また、エキシンは花粉アレルゲンが付着している場所でもある。我々は柱頭による同種異種花粉の認識機構や花粉形態の進化機構を明らかにするとともに花粉症対策にも役立てることを目的として、エキシンの形成機構の解明を行っている。本年度は、エキシンが正常に形成されないシロイヌナズナの突然変異kaonashi(kns)を新たに14個(通算では26個)見出した。昨年度までに単離したknsl〜knsl2についてはマッピングとクローニングを進め、エキシンの網目が小さくなるkns2とエキシンが薄くなるkns4について原因遺伝子を同定した。KNS2はスクロースリン酸合成酵素であった。KNS4は構造からはタンパク質の糖鎖の形成に関与する酵素かと思われたが、そうではなく、今はある種のペクチンの生合成酵素ではないかと考えている。エキシン形成の鋳型であり、kns4では薄くなっているプライムエキシンはセルロースでできていると言われているが、実際にはペクチンが多く含まれており、KNS4はその生合成に必要なのだろう。頂端分裂組織の維持に働くシロイヌナズナのCLV2タンパク質は、系統間でのアミノ酸置換の割合が著しく高いことが知られている。我々は、これらのCLV2の中に分子シャペロンSHEPHERD(SHD : 小胞体型のHSP90ホモログ)がないと機能できないタイプがあることを見出していた。本年度はシロイヌナズナ93系統のCLV2遺伝子をシーケンスしてタイプ分けし、少なくともある一つのアミノ酸置換を持つCLV2はSHD依存性を示すことを確認した。この変異はシロイヌナズナの歴史において早い時期に出現し、長い間SHDによって隠蔽されてきたことが推測された。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Plant and Cell Physiology 49
ページ: 1465-1477
ページ: 1478-1483
Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 72
ページ: 624-629