本研究では、モデル植物シロイヌナズナのゲノム情報を活用できるシロイヌナズナ属とタネツケバナ属の野生種を用いて、ゲノム倍数化・受精前隔離・受精後隔離・自家不和合性といったゲノム障壁を担う遺伝子を解析するとともに、その進化生態的な機能を評価することを目的とした。 (1) タネツケバナ属の種分化を解析するため、推定両親種を判定して異質倍数種を同定するマーカーをMYB2のフランキング領域の変異を用いて作成した。この領域は、種内で比較的変異が少なく、種特異的な配列長変異で特徴付けられ、少なくともこれまで研究対象としてきた4倍体種の判別には有効に用いることができるマーカーを開発した。さらに異質4倍体種と両親種2種(乾燥地の一年草種と湿地の多年草種)の3種1組を対象とした比較栽培試験を3組み合わせについて実施した。異質倍数体が乾燥と湿地条件が繰り返される変動条件においても旺盛に生育可能であることが明らかになった。今後、それぞれの環境下での遺伝子発現プロファイルを比較する予定である。2名のポスドク研究員は、スイス・チューリッヒ大学清水健太郎博士の研究室において、複数の低コピー核遺伝子の配列情報から属内の系統樹を作成するとともに、自家不和合性のスクリーニングを行った。その結果、タネツケバナ属において、不和合性が繰り返し進化したことが示唆された。 (2) シロイヌナズナ属4倍体ミヤマハタザオの分布域全域かちサンプルについて複数の核遺伝子を解析した。この結果、ミヤマハタザオが異質倍数体であること、さらに倍数化が複数回起源したことが強く示唆された。
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