対立遺伝子間の優劣性の原因として、一方の遺伝子の変異による機能欠損あるいは低下によるものが挙げられるが、それだけでは説明できない事象が多数存在する。本研究応募課題では、これまでアブラナ科植物の自家不和合研究で明らかにした対立遺伝子間の優劣性に関わるde novo DNAメチル化が植物の種々の現象に広く関与している可能性を考え、種内あるいは種間雑種を例にして、優劣性現象の探索およびゲノムワイドなDNAメチル化、遺伝子発現パターンの解析を行う。19年度は対立遺伝子の優劣に関わるDNAメチル化機構の解析に先立ち、ゲノムタイリングアレイを用いたシロイヌナズナゲノムにおける内在性の器官別DNAメチル化パターンの網羅的解析を進め、予備的な段階ではあるが、器官特異的なメチル化・脱メチル化の存在とそれに伴う遺伝子発現制御を示唆する結果を得た。しかしながら現在の所、上記メチル化と遺伝子発現の間に相関はそれほど見られておらず、組織特異的な遺伝子発現に関わるde novo DNAメチル化・脱メチル化が時期・組織特異的に限局して起こっている可能性が考えられた。そこで内在性のDNAメチル化と遺伝子発現制御の関係を明らかにするためには、特定の組織、細胞の遺伝子発現パターン、DNAメチル化パターンを明らかにすることが、本研究課題遂行の鍵になると考えている。本課題で得た種内あるいは種間雑種アレル特異的なメチル化に関する知見は、「対立遺伝子間の優劣性発現」のみならず「複二倍体における遺伝子量補正」や「雑種強勢」といった現象の理解につながるものと考えている。
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