栽培イネは大きくジャポニカ種とインディカ種に分けられる。いわゆる日印の交雑では、F1個体が大きく出穂遅延を起こすことがあり、生殖隔離の一因になることが示唆されている。本研究課題では、そういったF1個体が明確な遅延を示す組み合わせである日本晴(ジャポニカ種)と南京11号(インディカ種)の交配後代を使い、遺伝子レベルでのメカニズムの解明を目指す。以前に行った予備的な解析ではこれまでに報告された出穂期のQTL近辺のマーカーを解析し、Hd5近傍に大きなQTLが存在することを示す結果を得ている。本年は、ゲノムワイドに100か所のDNAマーカーで、186のF2個体を使い、QTL解析を行った。その結果、Hd5近辺に、LOD値が43.9、Hd9近辺に、10.7、Hd4近辺に、2.7、の3か所のQTLが検出された。また、それぞれの遺伝子座が、ヘテロである個体の開花を調べたところ、F1個体の遅延を説明できる出穂期の変化を確認できた。一方で、それらの遺伝子座が日本晴タイプ、南京11号タイプに固定したF2個体の後代を展開したところ、南京11号タイプにも関わらず、平均して、約7日間ほど出穂が遅いパタンをしめした。また、極一部の個体は、F1個体以上に出穂が遅く、上記のQTLで説明できないパタンをしめした。日本晴タイプに固定したF3後代は、大きく分離し、日本晴に近い出穂を示す系統から、一か月以上遅延する個体まで観察された。このことは、上記以外のQTLの作用を示唆している。現在、この分離世代を使ったラフなQTL解析を行っている。
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