研究課題
精子表層でGPIアンカーしているセリンプロテアーゼTESP5/PRSS21がどのように細胞機能を制御しているのかを調べ、次のような成果を得た。TESP5欠損マウス精子は、子宮を通過すれば受精能を保持しているが、その精巣上体精子は体外での受精能が著しく低下している。そこで、まず野生型精子と比較しながら、TESP5欠損精子の諸性質を検討した。生体外での精子タンパク質のチロシンリン酸化にともなう受精能獲得や自発的アクロソーム反応に異常は検出できず、精子機能に関与するさまざまな膜タンパク質の欠損やプロセシングも見いだせなかった。また、TESP5はADAM3のような卵子透明帯結合能も保持していなかった。したがって、TESP5欠損精子で低下している体外受精能は、TESP5がほかの精子機能タンパク質を分解していることに起因しておらず、おそらくTESP5による卵子側のタンパク質分解のためであると推測した。実際に、可溶化した卵子透明帯を組換え型TESP5に作用させたところ、同じ酵素量のトリプシンやアクロシンとは異なり、透明帯を限定的に分解することが判明した。おそらく、TESP5によるこの透明帯限定分解が透明帯上のアクロソーム反応と密接な関係があると考えられる。一方、TESP5欠損マウス精子への受精能付与因子を子宮分泌液より同定することを試みた。HPLCによってその因子を精製し、現在、化学構造の決定を行っている。さらに、アクロシンとTESP5の両方を欠損するダブルノックアウトマウスを作製し、その変異オスマウスの産仔産生能を調べたどころ、野生型と比較してほぼ半分まで産生能が低下していることが明らかになった。
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Genes Cells 13
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http://www.agbi.tsukuba.ac.jp/~tblab/