calpain7(別名:PalBH)は、Aspergillus nidulansで最初に報告されたPalBの哺乳類ホモログである。PalBはカビのpH環境に応答する転写因子を限定分解するプロテアーゼとして発見され、同様の作用をする酵素Cpl1/Rim13が酵母でも研究されている。しかし、哺乳類での機能に関しては全く不明であり、酵素活性をもつかどうかさえ分かっていない。本研究は、calpain7がN末端領域にMITドメインをもつことに注目し、動物細胞内での生理作用についてヒントを得る目的で行ったものである。 細胞表面から細胞内に取り込まれたEGFなどの受容体は、エンドソームにおいて、リソソーム分解系に運ばれるかリサイクルされるかの選別が行われ、モノユビキチン化された受容体(積荷分子)は、ESCRTと称される選別輸送装置によって、エンドソーム膜が陥入(出芽)してできる微小胞に送り込まれる。上流のESCRTがエンドソーム膜上にリクルートするESCRT-IIIはMWB選別の最終段階で働く因子複合体であり、出芽した膜を切断すると考えられている。哺乳類ではCHMPと称される因子がこれを担っている。Calpain 7は11種類のCHMP(CHMP1-7、アイソフォームを含む)のうち、CHMP1Bと特に強く、そして、CHMP1A、CHMP4bとも相互作用することを明らかにした。Calpain7は、2つのMITドメインをもつが、相互作用には2つとも必要であること、また、組換え蛋白質を用いて、Chmp1Bと直接結合することを明らかにした。Calpain7のモノクローナル抗体を作製し、免疫染色するとHeLa細胞内の細胞質で細かい斑点状に存在し、細胞内に取り込ませた蛍光標識EGFと僅かであるが一部共局在した。モノマー型EGFPと融合させたmGFP-calpain7は、より鮮明にEGFとの共局在が観察された。以上のことより、calpain7は、エンドソーム経路に関与していることが示唆された。
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