研究課題
calpain 7(別名 : PalBH)は、Aspergillus nidulansで最初に報告されたPalBの哺乳類ホモログである。PalBはカビのpH環境に応答する転写因子を限定分解するプロテアーゼとして発見されたが、哺乳類での機能に関しては全く不明であり、酵素活性をもつかどうかさえ分かっていない。本研究は、calpain 7がN末端領域にMITドメインをもつことに注目し、動物細胞内での生理作用についてヒントを得る目的で行ったものである。MITドメインがエンドソーム選別輸送複合体ESCRT-IIIの構成因子と相同なCHMP 1A、1Bと結合することを2008年度に明らかにした。本年度はCHMP 1と二量体を形成すること、そしてAAA型ATPaseのMITドメインと結合することが最近明らかにされたIST1とcalpain 7のMITドメインが同様に相互作用する可能性を検討した。エピトープタグ(FLAG)を付加したIST1をHEK293細胞に発現させ、免疫沈降するとcalpain 7が共に沈降されること、逆にGFP融合calpain 7を共発現させるとFLAG-IST1が抗GFP抗体で沈降することより、calpain 7とIST1の相互作用が明らかとなった。この相互作用には変異体解析より、calpain 7のMITドメインが必要なこと、そして、IST1のC末端領域の必要性が判明した。IST1が直接calpain 7のMITドメインに結合するのか、あるいはCHMP 1を介して結合するのか、今後、組換タンパク質を用いて明らかにする必要がある。calpain 7のプロテアーゼ活性は依然として明らかにすることができなかったが、活性中心と想定されるCys290の変異体と野生型で発現させたタンパク質の分解パターンに若干の差が見出され、酵素活性をもつかどうか、さらに検討する必要がある。
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Journal of Biochemistry 731
ページ: 731-745