大腸菌の膜プロテアーゼRsePがRIP (regulated intramembrane proteolysis)機能をもち、細胞表層ストレス応答調節に働くことを明らかにしてきた。細胞がストレスに曝されると、ペリプラズム側に活性部位を持つ内膜のプロテアーゼDegSが活性化されて、アンチσE因子RseA(一回膜貫通型タンパク質)が切断される。RsePに付いては、RIPに関わるプロテアーゼの中でもその機能や調節についての研究が特に遅れており、これまでRsePの基質認識・結合メカニズムについて、そのほとんどが不明であった。我々は基質TM内のヘリックスブレーカー残基がRsePとの結合に重要であること、RsePのTM3が基質と相互作用に直接関わることを見出した。これらの知見は最近明らかとなった古細菌S2Pの構造とも良く一致している。構造情報も利用してさらに解析を進めることで、これらのプロテアーゼの働きを分子レベルで明らかにしていきたいと考えている。また、RsePの機能制御機構を明らかにするため、RsePの機能制御(抑制)に関わるペリプラズム領域のPDZ様ドメインに関するシステマティックな変異解析やRsePアミノ酸配列の解析を行った。これまでは、RsePはペリプラズム領域に一つのPDZドメインを持つと考えられていたが、解析の結果、二つの連続したRseP様領域(PDZ-NとPDZ-C)を持つこと、そのうちのN末端側のPDZ-Nドメインが機能抑制に特に重要な役割を持つことを見出した。
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