オートファジーは細胞内のバルクな分解系であり、オートファゴソームと呼ばれる膜構造の新規の形成を通じてその分解基質が包み込まれることで、分解基質の選抜が始まる。我々はオートファゴソームの形成機構のなかでも蛋白質と脂質の相互作用に注目して、以下の成果を得た。第一にホスファチジルイノシトール3リン酸が酵母オートファゴソームの形成に必要であり、実際に膜の成分として存在することを示した。これはオートファゴソーム膜の成分を同定した最初の例である。とくにその内膜に濃縮が見られることは極めて興味深い。第二にAtg8/LC3はユビキチン様蛋白質であり、ホスファチジルエタノールアミンと結合することで機能するが、Atg16正複合体が、このユビキチン様反応のE3に相当する機能を発現することを明らかにした。Atg16L複合体の成分Atg12がユビキチン様反応のE2であるATG3と結合することで、基質である膜複合体へと近接させる。第三にLC3の脂質化反応がオートファゴソームの形成の最終期で機能することを明らかにした。LC3のプロセシングプロテアーゼであるAtg4の活性不全型蛋白質を細胞内に大量発現させるとLC3と強固に結合することで、LC3の機能を阻害する。その結果最終的に閉じることのできないオートファゴソームが多数蓄積することが判明した。これらの結果は、脂質と蛋白質のダイナミックな相互作用によりオートファゴソームが形成されることを示している。
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