研究概要 |
細胞は、小胞体に蓄積した異常タンパク質を細胞質へ放出し、ユビキチン・プロテアソーム系により分解する機構を持つ。このシステムは小胞体関連分解(ERAD)と呼ばれ、この過程でAAA型シャペロンであるVCPが重要な役割を果たす。VCPは、様々なアダプター分子と結合して多様な細胞機能に関与する。報告者らは、新たなVCP結合タンパク質としてSVIPおよびUBXD1を同定したが、これらは共にERADに関与するタンパク質であると考えられる。VCPの既知アダプター分子(p47,Ufd1/Np14,SVIP)が、互いに競合的にVCPと結合して、異なる複合体を形成するのに対して、UBXD1とSVIPは同時にVCPと結合して同一の複合体を形成する。そこで、VCPとUBXD1の結合様式を明らかするために、VCPの三つのドメイン(N,D1,D2)およびUBXD1の各ドメイン(N末端ドメイン、PUBドメイン、UBXドメイン)を細胞内で共発現させ、互いに結合する領域を免疫沈降により解析した。また、VCPと各アダプターおよびUBXD1をそれぞれ大腸菌で発現・精製し、invitroでの結合実験を行った。その結果、VCPとUBXD1は直接結合し、両者の結合に関与するドメインは、それぞれVCPのND1およびD2ドメインとUBXD1のN末端およびUBXドメインであることが示された。このことから、UBXD1は既知のVCP結合タンパク質とは異なる様式でVCPと相互作用しその機能を調節することが示唆された。
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