(目的)骨髄移植により、膵β細胞容積が増加する現象が認められている。このメカニズムを解明する。(方法)C57BL6マウスにいろいろな条件下で骨髄液注入や放射線照射を行い、どのような手技が膵β細胞容積増加に必須であるかを検討した。また、我々の観察では、膵β細胞容積増加が認められる際には必ず、膵ラ氏島内の血管内皮細胞数の増加も認められていた。従って、膵ラ氏島の血管内皮細胞数の規定因子である膵β細胞におけるVEGF-Aの発現がこの現象に関わっている可能性がある。そのため、膵β細胞特異的VEGF-Aノックアウトマウスに骨髄移植を行ない膵β細胞容積が増加するか否かに関して検討した。 (結果)骨髄移植のさまざまな条件を検討した結果、全身へ放射線照射すれば、骨髄液注入を行わなくとも膵β細胞容積増加が認められることが明らかになった。一方で、骨髄のみ、あるいは、膵のみに放射線照射を行った群では、膵β細胞容積増加が認められなかったことから、全身の放射線照射が膵β細胞容積増加に必須でかつ十分であることが明らかになった。また、VEGF-Aノックアウトマウスでは、骨髄移植を行っても、膵β細胞容積の増加は認められないことが明らかになった。 (結論)骨髄移植による膵β細胞容積増加のためには、全身の放射線照射が必須でかつ十分であることが明らかとなった。さらに、この現象には膵β細胞に発現するVEGF-Aが必須と考えられた。
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