転写因子c-Mybは、未分化造血系細胞の増殖と分化に重要な役割を果たしている。私達は、Wntシグナルによって、TAK1キナーゼを介して、2つのキナーゼ、HIPK2とNLKが活性化されること、そして、NLKが直接c-Mybの複数部位をリン酸化し、c-Mybのユビキチン化とプロテアソーム依存的な分解が誘導されることを、すでに見出している。Wntシグナルは、造血系細胞の分化に重要な役割を果たすことが知られているが、Wntシグナルによるc-Mybタンパク質の分解は、この分化制御メカニズムの一端と考えられる。しかし、c-Mybのユビキチン化と分解の分子メカニズムは、これまで良く分かっていなかった。本年度は、c-Mybに結合する一群のFボックスタンパク質を解析し、そのうちの一つFbxw7が直接c-Mybに結合し、Wntシグナル依存的なユビキチン化とプロテアソーム依存的な分解を、誘導することを明らかにした。詳細な結合様式を解析した結果、Fbxw7は、c-Mybと共にHIPK2にも結合し、一方、Fbxw7と共に機能的ユビキチンE3リガーゼのサブユニットであるCul1は、NLKとHIKPK2の2つのキナーゼに結合することが示された。NLKによるc-Mybのリン酸化に加えて、このような因子間の相互作用が、HIPK2とNLKによるc-Mybのユビキチン化とプロテアソーム依存的な分解誘導に寄与していると推定される。
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