研究課題
カルパインは、カルシウムによって活性化される細胞内システインプロテアーゼである。脳神経系におけるカルパインの生理機能と病理作用を検討するために、カルパイン阻害タンパク質カルパスタチンを過剰発現するトランスジェニック(Tg)マウスおよびノックアウト(KO)マウスを作製した。次に、m-カルパインKOマウスを作成し、μ-カルパインKOマウスを導入した。Μ-カルパインKOマウスは野生型マウスと比べて顕著な異常は認められなかったが、m-カルパインKOマウスは胎生致死であった。M-カルパインKOマウスでは、胎盤において細胞死が認められたことから、胎盤の形成と維持に関与すると推測される。このような結果にもとづいて、m-calpainの脳神経系における作用を検討するためにははconditional KOマウスが必要であると判断し、作製を開始し完了した。現在、繁殖と解析を行っている。次に、カルパスタチンKOマウスを用いて、神経可塑性(電気生理実験)および認知能力(行動実験)を検討した。カルパスタチンKOマウスにおいて長期増強が昂進し、これはカルパスタチンTgマウスとの交配によって回復したことから、カルパインが長期増強を制御することが示唆された。しかし、認知能力に関する多数の行動実験では明確な異常が認められなかった。このことから、電気生理学的に検知されるカルパインの作用はアーティファクトである可能性が高く、注意を要する。
すべて 2008
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Mol. Brain 1(7)
ページ: 1-15
J. Neurosci. Res (in press)