研究概要 |
クラミドモナスロドプシンにおける光吸収特性およびチャネル特性を分子生物学的に同定し、その連関メカニズムを解析した。原核生物型ロドプシンの光吸収特性とイオン輸送特性が7回膜貫通領域へリックスA-Gにあるといわれていることに注目し、オーバーラップエクステンションPCR法により、chop1(表記:ABCDEFG)とchop2(表記:abcdefg)の膜貫通領域を組み替え、C末側にVenusを付加した融合タンパク質を発現させるようにデザインした哺乳類細胞発現用プラスミドベクターを作製した。これらを、リポフェクション法により遺伝子導入・発現させた培養HEK293細胞にパッチクランプ法を適用して、光電流を計測し、その光応答特性とイオンチャネル特性を解析した。さまざまな組み合わせのキメラについて解析することにより、光受容チャネルにおいて、光応答特性、イオン透過特性を、それぞれ制御している構造の同定を試みた。膜貫通領域の組み換えにより、12種類のキメラcDNAを作製した。これらは、すべてHEK293細胞において、膜に強く発現した。キメラABCDEfgは、吸収光波長応答特性が長波長側にシフトした。この特性は、野生型のchop1,ABCDEFGに類似していた。キメラABCDEfgは、野生型のchop2と同程度に高いNa^+透過性を示したが、キメラABCDEFgのコンダクタンスは小さかった。また、キメラABcdefgの光電流は、弱い不活性化する性質において、野生型のchop2,abcdefgと異なった。本研究において、クラミドモナスロドプシンの「モーダルシフト」に関与している構造を同定した。すなわち、膜貫通ドメインE/eが吸収波長特性制御に関与していること、膜貫通ドメインF/fがコンダクタンス制御に関与していること、膜貫通ドメインB/bが光電流キネティクス制御に関与していることが示唆される。
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