原核生物には普遍的にMscSという機械受容チャネルがあるが、最近、植物や菌類などのゲノム中にMscSのホモログが存在し、細胞内膜にあることが判明した。本研究では複数あるクラミドモナスMscSホモログ全てについて機能の解明を目指す。 1)クラミドモナスのMscSホモログの分子生物学的解析:クラミドモナスのゲノムにはバクテリアの機械受容チャネルMscSのホモログが少なくとも3つは存在する。そのうちのMsc3の全長cDNAのクローニングに成功した。Msc2についてはmRNAがあることは確認できたが、全長の配列を得ることはできていない。Msc1は膜貫通部位でMscSと高い相同性を持ち、大きなN末領域があることが明らかになった。2)MscSホモログの局在の解明:Msc3においてC末で親水的である適当な部位を探し、大腸菌に大量発現させて、ウサギに免疫させた。間接蛍光抗体により抗原の局在を調べたところ、細胞の中にドット状に分布し、細胞膜にはほとんど存在しないことが分かった。葉緑体の中への分布もあったが、主には葉緑体を核の間の細胞質にあった。光がない条件で葉緑体の発達を阻害しても、この分布には変化がなかった。3)MscSホモログの電気生理学的性質の解明:Msc3を大腸菌に発現させ、spherplastの巨大細胞にしてパッチクランプを行った。コンダクタンスはMscSよりも小さく、Msc1とほぼ同じであった。機械刺激により一度開くと閉じにくいというヒステレシスの性質を持っていた。まとめ:以上の結果はMsc3が細胞の中で機械受容をするという新しいタイプの機械受容チャネルであることを示している。
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