研究概要 |
サイクリックADPリボース(cADPR)は、β-NAD^+から作られる細胞内セカンドメッセンジャーであり、リアノジン受容体Ca-誘発Ca-遊離(CICR)機構を活性化し、細胞内Ca濃度を高めて細胞反応を誘発するとされている。最近、環状化酵素活性を持つCD38により、cADPRは細胞外で作られ、細胞内に取り込み、それが作用すると言われだした。今まで、我々はcADPRの細胞内セカンドメッセンジャー機能にのみ注目していたが、細胞外のcADPRをどのように感受(センス)し、細胞内機能を持つ分子として変換するか、新たな研究課題として浮上してきた。本研究では(1)cADPRが本当に細胞外から作用するのか、(2)作用するとすれば、どのような分子によっているのか、(3)どのような作用が誘発されるのか、(4)細胞内でつくられるcADPRと区別があるのかについて調査する。本年度の成果として、(1)に関して、NG108-15神経腫瘍細胞において、温度感受性にcADPRが細胞外から作用し,細胞内Ca濃度上昇を引き起こすことを発見した。(2)に関しては、cADPR合成酵素であるCD38分子に注目して、CD38結合蛋白質解析を現在行っている。方法として、CD38-Flag,CD38-HA融合蛋白をHEK293T細胞に発現させ、FlagもしくはHAで免疫沈降、2次元電気泳動により発現細胞にのみにみられるスポットを同定している。(3)に関しては、細胞外cADPRがinニューロンにおいても作用する可能性があり、脳下垂体標本をもちいて検索を行う予定で、下垂体後葉(Nerve ending)を損傷の少ない状態で取り出す方法を検討中である。(4)に関しては、有用なツールとなると考えられる合成サイクリックADPリボースアナログcADPcRを用いて、NG108-15細胞へのcADPcR細胞外投与の効果をcADPRの反応と比較中である。
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