研究概要 |
平成19年度の研究により得られた新たなモデルは、次のようなものであった。脈絡膜や遠位尿細管では、細胞自体にカルシウム感知装置が備わっており、秒から分の単位でKlotho依存性に自律的Ca運搬を行う。Ca低下に際しては分単位でPTHが分泌されるが、この分泌にもKlothoは必要である。PTH自身の半減期は2分程度であり、骨からの吸収、尿細管からの再吸収を上昇させるが、近位尿細管に作用してビタミンD活性化酵素である1 α hydroxylaseの転写を促進する。そのため、ビタミンDが活性化され、時間から日の単位で、尿細管、骨、腸からのカルシウム動員を上昇させ、持続的なCa上昇を誘導する。しかしながら、ビタミンD持続的上昇は、やがて抑制されなければならない。実はそこにもKlothoが関っていることが証明されつつある。Urakawaらの報告に依れば、KlothoはFGF23と共同で1 α hydroxylaseの転写抑制に必要である。(Urakawa,2006)この分子メカニズムは詳細には不明であるが、Klothoは日単位で上昇した1 α hydroxylaseの抑制にも関与することになり、負のフィードバックシステムを構成していることになる。すなわち、Klothoはカルシウム恒常性の鍵分子であり、central regulatorであるという概念に到達した。謎の分子であったKlothoの役割が解明され、カルシウム恒常性問題がKlothoを中心とした統一的な理解として提示できたと考えている。
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