フィトクロムは植物が持つ主要な光受容体である。フィトクロムを初発とする光シグナル伝達経路を解明するために、本研究では原始陸上植物である苔類ゼニゴケを用いた。単離されたMpPHY遺伝子は1分子種のみ存在した。大腸菌発現系よるリコンビナントMpphy(N612)は赤色光/遠赤色光可逆的な構造変換を示した。次に、フィトクロムのGAFドメイン内のTyr残基をHis残基に置換することで光可逆性を失い、常に活性型として機能するという知見に基づき、Mpphyの241番目のTyrをHisに置換したリコンビナントMpphyY241H(H612)を得た。このMpphyY241H(N612)は光可逆性を失い、蛍光タンパク質となった。ゼニゴケ野生株では光依存的に仮根形成が見られる一方で、MpphyY241H全長を発現させたMpphyY241H導入株では暗黒下でも仮根形成が観察された。またこの株では青色光応答が抑制されていた。MpphyY241H-GFPは光条件を問わず核内で顆粒状構造体を形成し、常に活性型として機能していると予測された。現在、Mpphy機能欠失変異体の作出を試みており、Mpphyが制御する光応答メカニズムの解明が期待される。
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