研究概要 |
我々は、匂い・フェロモン環境に応じてどのようにセルセンサー機能を変化(モーダルシフト)させ、引いては個体適応へと導くのかという問題の解明を目指している。本年度は特に、匂い環境適応におけるOCAMの役割、鋤鼻感覚細胞の機能発現制御機構について解析を行い、以下の成果を得た。 嗅上皮ゾーン2-4の嗅細胞に発現している細胞接着分子OCAMの機能を明らかにするために、OCAM遺伝子欠損マウスの脳切片を用いて電気生理学的解析を行った。嗅神経の電気刺激によって誘発されるフィールド電位を嗅球の糸球体層から記録した。野生型の全域と変異型のOCAM陰性領域に比べ、変異型のOCAM陽性領域におけるシナプス応答が有意に低下していた。また、数発の低頻度刺激を5分間隔で与えたところ、野生型では5分間隔で十分な応答の回復が見られたのに対し、変異型では著しい応答の減衰が認められた。一方、ヘアパルス抑圧には差が認められなかった。従って、OCAMは嗅神経の興奮・伝播から神経伝達物質放出までのいずれかの段階で機能しているものと考えられる。 培養鋤鼻器における鋤鼻受容体VR1,VR4の発現量は,副嗅球との共培養によって共培養7〜14日目にかけて有意に上昇し,その後プラトーに達した。共培養鋤鼻器では,発現した受容体は本来あるべき部位に局在していた。また,受容体発現量の経時的な変化と一致して鋤鼻ニューロンが尿に対する応答性を獲得することが判明した。以上より,鋤鼻ニューロンの鋤鼻受容体発現と機能性獲得がその投射の標的である副嗅球ニューロンによって制御されることが明らかになった。
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