研究概要 |
ワサビの主成分はallyl isothio-cyanate(AITC)であり、哺乳類でDTRPチャネルファミリーに属するTRPA1がその受容に関わっていると考えられている。ショウジョウバエにおいてもTRPA1のホモログが報告されており、そのホモログの1つであるpainlessがワサビの受容に関わると報告されている。painlessはPエレメントの挿入系統から幼虫の痛覚異常として発見された遺伝子で、感覚神経で発現している(Tracey et al., 2003)。また、painlessを発見したグループによって成虫のワサビに対する行動学的実験が行われ、野生型はワサビを忌避するが変異体では忌避がみられないと報告された(Al-Anzi et al., 2006)。しかし、行動学的実験だけではショウジョウバエがワサビに応答するかは不明であったので本研究では電気生理学的解析を行いワサビに対する神経応答を唇弁の感覚子から記録した。ワサビを受容する味細胞を同定した結果、カフェインなどの苦味物質を受容するL2細胞であることがわかった。次にワサビの受容体を同定するためにpainless変異体の電気生理学的解析、摂食行動的解析を行ったが、painlessがワサビの受容に関わるということを証明できる結果は得られなかった。他のtrp遺伝子についても検討したがAITC受容への関与は確認されなかった。したがって、ショウジョウバエにおけるAITCは未知の受容体によっていると考えられる
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