研究概要 |
(1)V-ATPase電流のリアルタイム定量的解析:マウスマクロファージ細胞株(RAW264)より分化させた破骨細胞にホールセルクランプを行い培養条件によるV-ATPase電流密度の違いを検討した。ガラス,コラーゲンコートで有意差は無く,プラスチックで高い傾向があった。また初代培養マウス破骨細胞との間にも有意差は無く,細胞膜V-ATPaseの機能評価の系として有用であることを確認した。(2)内因性pHバッファ存在下でのH^+センシング応答の検討:穿孔パッチ法をH^+チャネルを高密度で発現するマイクログリアに適用し,塩化アンモニウムの除去や乳酸負荷による細胞内アシドーシスに対するチャネル応答が内因性pH bufferの元でも起こる事を実証した。H^+チャネル活性の時間経過は細胞膜を介するpH勾配(ΔpH)変動の時間経過とよく一致した。低濃度の乳酸ではΔpH変化は少ないが,長時間暴露によって電流振幅・活性化速度が増強し,その過程にPKCが関与することが明らかになった。(3)H^+チャネルとV-ATPaseのH^+センシング応答と両者の相互作用:H^+チャネルとV-ATPaseを共発現する破骨細胞で,酸刺激に応答する両者のH^+電流を測定した。同一条件下での定量評価は初めての試みであり,ΔpHと電位に対するH^+チャネルとV-ATPasの働き方の違いが明らかになった。今後両者の相互作用の検討を進める予定である。(4)単一細胞から放出されるH^+の定量とH^+動態のシミュレーションモデルの作成:multi-compartmentモデルを作成し,細胞サイズやΔpHの異なる条件で得られた実測データと照合した。Fitの良い場合と悪い場合があり,後者について更にパラメータを加えて改良中である。成果の一部は論文(Pflugers Archiv.,2008),骨代謝学会,米国生物物理学会,生理学会で発表した。
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