研究概要 |
私たちは、匂いセンサーとして中心的役割を果たす嗅細胞の機能発現を調節する膜蛋白質群に焦点を当てて研究を行っている。とりわけ本研究班においては、嗅細胞特異的新規ゴルジ膜蛋白質#123(未発表)及び嗅細胞軸索サブセットに発現する免疫グロブリンスーパーファミリーGPIアンカー型膜蛋白質BIG-2(J. Neurobiol. 1995)に着目し、これら分子の嗅細胞における詳細な発現様式及び生理機能の解明を目指して研究を行っている。 平成19年度においては特にBIG-2の発現・機能解析を中心に行った。BIG-2は1995年、私たちのグループが神経系特異的発現を示す新規免疫グロブリンスーパーファミリー分子として発見したGPIアンカー型膜蛋白質である。BIG-2はTAG-1, contactin, BIG-1と高い構造類似性を示し、また培養海馬神経細胞の神経突起伸長促進作用を有する。BIG-2蛋白質を認識する特異抗体を作成して免疫組織化学的解析を行うと、特に嗅細胞軸索に高い発現が検出された。嗅細胞における発現を詳細に解析すると、BIG-2蛋白質はその軸索サブセットに局在しており、嗅球における糸球がBIG-2強陽性、弱陽性、陰性とモザイク状に観察された。またBIG-2の発現強度は嗅細胞における嗅覚受容体遺伝子の選択と強い相関関係を有していた。さらに発生工学的手法によりBIG-2遺伝子欠損マウスを作製したところ、嗅細胞軸索の標的糸球体への集束に異常が観察された。以上の結果から、BIG-2は一次嗅覚神経系における「匂い地図」形成を司る重要機能分子であることが明らかとなった(Neuron, in press)。
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