我々は、生体内の流動現象が物理学・力学の基礎の上で十全に理解され、予測され得るものであり、生命現象の力学的理解が重要であることを強調してきた。しかしながら、従来の研究ではモデル化に不適切な部分が多く、疾患に対する生体力学的な検討も不十分であった。本研究は、生命現象の本質を探り、その異常を診断し、治療する手段を探るための統合的生体力学を構築することにある。そこで、マルチスケール・マルチフィジックスの計算生体力学をナノレベル(生体高分子)から全身スケールまで統一的に展開するシミュレーション技術を開発し、今後の生命現象の理解と各種疾病の病因の理解、診断手法の開発、治療技術への展開を目指している。 2009年度は、脳動脈瘤の発生に係る流体力学的因子であるGONの提案や、マラリア感染赤血球のレオロジー特性や微小循環内の血流、血流中の血球やがん細胞の共焦点micro-PIV計測、微生物や腸内細菌の集団遊泳の大規模数値シミュレーション、胃・腸内のマクロ流動解析など、各課題について研究を行う。
|