研究概要 |
本申請では、「メダカを用いた個体・組織レベルでの遺伝子機能解析系の確立」を目指している。逆遺伝学的手法を確立し、ここで得られた変異個体をベースに、別途確立する組織特異的遺伝子発現系により組織特異的に当該遺伝子発現の制御を行い、組織間・異なるタイプの細胞間での遺伝子機能の違い、その最終生物作用の違いを解析する、というのが基本戦略である。昨年度においてTILLING法によるメダカ逆遺伝学的手法を確立した。確立した変異体スクリーニング法は,PCR増幅産物中に存在する変異を、Tm値の違いとして、HRM(Hi-Res Melting・融解温度曲線分析)法により検出する(Light Scanner,Idaho Tech.)新たな変異検出法である。これにより,極めてハイスループットに,しかも低コストでの変異体取得が可能になった。本年度は、引き続きメダカ変異体のスクリーニングを行うとともに、得られた変異体の表現型解析を行った。本法により、ATM,ATR,Rb,p53,Rev1,Exo1,Msh2の変異体を同定できた。これらの変異体について,野生株とバッククロスする事により想定外の導入変異を除去するとともに,ホモ個体を樹立し、変異体の表現型解析を行った。得られた変異体の多くは、マウス、ヒトで報告されていると同様の表現型を示し、メダカがモデル動物として有用である事が明らかとなった。一方、ATR変異体はある程度まで発生が進む事、Rev1変異体は野生株に比べ化学発癌の頻度が低くなる事等、マウスと異なる、あるいは新たな表現型を検出できた。今後の、分子レベル・組織レベルでの解析が期待される。また,組織特異的遺伝子発現系の確立については,基本となるBACの改変技術(recombineringの手法)を確立し、Cre-loxPを用いたtransgenic個体樹立を試みるとともに、赤外レーザを用いたヒートショックプロモーターによる遺伝子発現制御の基本的手法を報告し、当方法をメダカに適用する系を樹立しようと試みている。上記逆遺伝学的手法で得られた変異体をベースに,組織特異的遺伝子発現系構築の為の技術的基盤の確立を目指している。
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