研究概要 |
本申請では、「メダカを用いた個体・組織レベルでの遺伝子機能解析系の確立」を目指している。逆遺伝学的手法を確立し、ここで得られた変異個体をベースに、別途確立する組織特異的遺伝子発現系により組織特異的に当該遺伝子発現の制御を行い、組織間・異なるタイプの細胞間での遺伝子機能の違い、その最終生物作用の違いを解析する、というのが基本戦略である。過去3年間においてTILLING法によるメダカ逆遺伝学的手法を確立し、数多くの変異体を同定してきた。TILLING法においては、一度ライブラリーを作成すれば、変異のスクリーニングが最も重要なステップとなる。我々は高精度融解曲線(HRM)法に依る,ハイスループット・低コストな解析系を実現している。HRM法は従来法に比べ極めてハイスループットではあるが,それでも1エキソンの解析に10日間を要する。そこで,次世代シークエンサーを用いた、よりハイスループットな変異検出法の開発を行った。'次世代シークエンサーの現実的利用には,混合した多種類サンプルから正確に変異を検出できる事が必須である。ABI社SOLiDを用いた場合の検出感度を検討し、48サンプル混合でもほぼ100%の正確さで変異検出が可能である事を見いだした。そこで,SoLiDを用い120遺伝子、500エキソンについての変異検索を開始した。尚,次世代シークエンサーに依る変異検索の一部は,新学術領域「ゲノム支援」の援助を受けている。一方、これまでに得られている変異体の解析から,DNA損傷誘発遺伝的不安定性の指標としてミクロサテライトが有望である事を見いだした。P53遺伝子依存的に不安定となり,DNA損傷応答機構研究に新たな展開をもたらすことが期待できる。
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