研究概要 |
本申請では、「メダカを用いた個体・組織レベルでの遺伝子機能解析系の確立」を目指している。逆遺伝学的手法を確立し、ここで得られた変異個体をベースに、別途確立する組織特異的遺伝子発現系により組織特異的に当該遺伝子発現の制御を行い、組織間・異なるタイプの細胞間での遺伝子機能の違い、その最終生物作用の違いを解析する、というのが基本戦略である。過去4年間においてTILLING法によるメダカ逆遺伝学的手法を確立し、環境応答、DNA損傷応答、発生制御等、生物学的に重要な経路に関与する遺伝子の変異体を数多く同定してきた。これらの変異体について,野生株とバッククロスする事により想定外の導入変異を除去するとともに,ホモ個体を樹立し、変異体の表現型解析を行った。ATM,ATR,Rb,p53,Rev1,Exo1,Msh2等損傷応答に関与する遺伝子について特に解析がすすんだ。多くの損傷応答に関与する遺伝子のヌル変異体は、マウスでは不妊になる事が多いいが,メダカではある程度不妊を回避できる事を明らかにするとともに、多数個体を対象とする事が可能なメダカの特質を利用し、損傷応答の鋭敏な検出系を確立する事ができた。また、本年度は更なるTILLINGライブラリー変異体スクリーニングのハイスループット化を目指し、次世代シークエンサーを用いた解析を開始した。現在120遺伝子のスクリーニングが進行中であるが、DNA-PKcs等の重要遺伝子のヌル変異体を得る事に成功した。これら変異体スクリーニングと並行して進めている組織特異的遺伝子発現系の確立においては、基本となる赤外レーザ顕微照射による遺伝子発現誘導法確立について昨年度報告した.本年度は、この技術をメダカに適用する為にメダカヒートショックプロモーターを用いたCre発現調節系の開発を行なうとともに、受精卵への遺伝子導入による体細胞解析をより効率よく、しかも正確性を持って行なう為に、トランスポゾンpiggyBacベクターを用いた体細胞形質転換法を確立した。
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