研究概要 |
本研究は、ユビキチン・プロテアソームシステム(UPシステム)によって分解が促進されるメチル水銀毒性増強蛋白質およびメチル水銀毒性軽減蛋白質を同定し、それら蛋白質のメチル水銀毒性に対する作用機構を解明すると共に、UPシステムによるそれら蛋白質の分解調節機構を明らかにすることを目的としている。メチル水銀毒性を増強または軽減する蛋白質をsiRNA法で検索したところ、新たに数種の蛋白質を見出すことに成功した。現在これら蛋白質とUPシステムとの関係を検討中である。また、既に我々が見出している蛋白質について検討し、メチル水銀毒性増強作用を有するピルビン酸合成関連酵素(UPシステムによって分解される)に関しては、ピルビン酸のミトコンドリアへの取り込み量増加がメチル水銀毒性の増強に関わること、そして、ピルビン酸がTCAサイクルで代謝を受けることなくその作用を示すことが明らかとなった。また、UPシステムとメチル水銀毒性との関係を明確にするために、ユビキチン転移酵素の中でメチル水銀毒性に関与する分子種を検索したところ、Ubc1,Cdc34,Ubc4,Ubc5,Ubc11の5種の高発現およびUbc2,Ubc13の欠損がそれぞれ酵母にメチル水銀耐性を与えることが判明した。Ubc2欠損酵母にCdc34を高発現させたところ相乗的に耐性度が上昇したことから、両者に何らかの特異的な関係がある可能性も考えられる。本知見はUbc2の新しい機能の存在を示唆しており、本研究によってメチル水銀毒性の関係のみならず、各ユビキチン転移酵素の役割分担が明らかになる可能性がある。
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