これまで、カーボンナノチューブ量子ドットにおいて、テラヘルツ光子の量子検出に成功したが、その効率は決して高いとはいえない。このことは、ナノスケールである量子ドットとテラヘルツ波の波長の間のスケールの隔たりがきわめて大きいためである。従って、効率的にテラヘルツ波を量子ドットと結合焦る必要がある。そこで、テラヘルツ波に対するアンテナ構造を作製し、デバイスに効率的にテラヘルツ波を集光することを試みた。そのために、数十ミクロンの凹凸を持ち、テラヘルツ波の波長程度のアンテナ構造(ブルザイアンテナ)を作製するプロセスを開発した。その効果を確認するために、テラヘルツ応答を得ることができる磁場中でのGaAs/AlGaAs 2次元電子ガスシステムを利用し、その抵抗変化に帯するテラヘルツ応答に帯するアンテナの効果を調べた。その結果、アンテナをつけることにより、数倍程度の応答の増大を観測することができた。 カーボンナノチューブ量子ドットデバイスの最大の問題は、量子ドットの特性を決めるナノチューブの品質をデバイスプロセスで失わないことである。これまでの研究で、レジストプロセスをはじめとする一般的な半導体プロセスをカーボンナノチューブに施すことにより、品質が劣化し明確な量子ドット特性が失われることが多いことがわかっている。そこで、新たに2層カーボンナノチューブに着目した。デバイスプロセスにより外層のナノチューブがダメージを受けたとしても、内装のナノチューブは保護される期待がある。一方、内層と外層のナノチューブが半導体か金属であるかは任意であるため、デバイス応用においてはこれを明らかにする必要がある。本研究では、ゲート電圧特性を調べることによりこのことを明らかにすることができることを示した。
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