研究課題/領域番号 |
19101009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高林 純示 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10197197)
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研究分担者 |
松井 健二 山口大学, 医学系研究科, 教授 (90199729)
松田 一彦 近畿大学, 農学部, 教授 (00199796)
松村 正哉 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, チーム長 (00370619)
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キーワード | 植物間コミュニケーション / 受容機構 / シロイヌナズナ / 青葉アルデヒド / ヘキセナール |
研究概要 |
植物間のコミュニケーションの分子機構を解明するための第1段階として植物の揮発性物質受容機構に注目した。揮発性物質の多くは疎水性であり、植物葉表面のワックス層に吸着、更には濃縮され、単純拡散によって表皮細胞に浸潤すると考えられた。シロイヌナズナ変異体を用いた検討からグルタチオンを介した信号伝達経路が揮発性物質受容に必須であることを明らかにした。そのため、単純拡散により植物細胞内に浸潤した揮発性物質はグルタチオン代謝系に何らかの刺激を伝達することで、防御遺伝子の誘導を行うと考えられる。この作業仮説の立証のため、(A)揮発既物質の植物葉への吸着・濃縮のダイナミズムを明らかにした。これまでに青葉アルデヒドアナログとして2-メチルペンテナール蒸気に曝露した植物葉への吸着解析システムを構築した。その結果、吸着され、浸潤により細胞内に到達したアルデヒドは細胞内還元酵素により直ちにアルコールへと還元され、その一部はさらにアセテートへと変換されることが示された。更に、(B)放射性同位元素標識した揮発性物質を調製し同様の実験系により吸着キネティクス解析を進めた。^3Hラベルされたリノレン酸にリポキシゲナーゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼを順次作用させ、ラベルされたヘキセナールを調製した。この時、生成したヘキセナールが生成後直ちに反応液内の酵素と反応し、回収率が著しく低下したが、反応を素早く終了することによって回収率を高めることが可能となった。このラベルされたヘキセナールを上記(A)で確立された曝露システムに用いたところ、10%程度の放射能が植物に取り込まれることが明らかとなった。その一部はトリクロロ酢酸により沈殿するため、高分子に取り込まれていると予想される。現在、これら取り込み先を種々の機器分析により検討中である。これらの結果によって、植物の揮発性物質受容機構の初過程の一部が解明された。
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