研究課題
研究代表者・分担者は「ひと」、「もの」、「かね」、「社会的共通資本」の四つのグループが、交流を図りながら研究を進めている。本年度の成果は以下の通りである。「ひと」グループでは、企業の労働者に対する学力評価に注目し、独自に実施した調査票調査を下にミスマッチ失業の背後にある問題を検討した。また、近年の失業率上昇の主因はマクロ的な経済ショックの失業率への影響の持続性が高まったことにあり、その持続性は、学卒時の労働市場状況が労働者の職歴に長期に渡り影響する世代効果がもたらしている可能性があるとの示唆を得た。「もの」グループでは、経済成長モデルに外部性を導入した場合に特徴的に現れる多数均衡の分析を、閉鎖モデル、2国貿易モデルとのそれぞれで行った。また、離散時間モデル、連続時間モデルにおける結果も比較検討した。「かね」グループでは、わが国の資金の流れの変化を資金循環勘定を用いて分析し、今後の大量国債の発行による変化について分析した。また、レベニューボンドによるアジア諸国のインフラ整備、さらには、中小企業金融のデータ整備に関する金融の政策提言を行い、実際の政策に応用されつつある。また、国際間の金融資産取引が自由にできる状況を取り上げ、資本課税の長期的成長率等に対する国際間の波及効果を分析した。「社会的共通資本」グループでは、各世代が自らの親の世代に対し利他的であるような世代重複経済において子から親への介護援助と親から子への教育投資や関係を分析することで、社会資本形成の動学的過程を明らかにした。また、価格競争モデルを利用して、シュタッケルベルグ的先導者・追随者の内生的な役割分担のあり方の分析を通じて社会共通資本としての市場の内生的形成のプロセスを示した。さらに、社会的共通資本と経済成長・国際間の所得格差に関する研究を進め、国際的所得分布を研究するために、分布の計算方法を分析した。
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