研究課題
国立天文台ハワイ観測所の口径8mすばる望遠鏡の、近赤外線での空間解像力を10倍向上させる188素子補償光学系とその適用範囲を広げるためのレーザーガイド星生成システムを、2006年度までに特別推進研究で完成させたが、本基盤研究Sでは、これらのシステムをすばる望遠鏡で連携させて安定運用するために必要となる、波面センサー、大気分散補正系、ビームスプリッタ、ガイド星補足光学系などのサブシステムを開発し、全体を統合したシステムを完成させることと、これを用いてこれまで補償光学観測ができなかった遠宇宙の観測を行うことを目的としている。平成21年度は、これらのサブシステムの開発が進み、全体統合系の試験観測を開始し、11等星相当のレーザーガイド星を安定に生成することができるようになった。平成22年1月に行った試験観測中に可変形状鏡に損傷が発生したため、この復帰に約6ヶ月を要するが平成22年度中には、本研究目的である遠宇宙の観測テーマについてレーザーガイド補償光学系を用いた観測を開始できる見込みである。遠宇宙の銀河の観測においては、本研究グループが平成18年に発見した129億光年かなたの銀河IOK-1が、現在でも最遠記録となっている。この記録を更新するため130億光年かなたの銀河探査観測を進めており、撮像観測からいくつかの候補銀河を発見した。平成21年度末にはこのうちの2つの銀河の分光観測を行い、そのデータ解析を開始している。遠方の銀河の観測を拡大することにより、宇宙史の中で、この時代に形成された銀河からの紫外線放射により銀河間空間の中性水素ガスが電離した「宇宙の夜明け」が起きたと考えられるが、その時期をより詳細に特定すること、また高解像観測で初期銀河の構造を解明することを目的としている。
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http://optik2.mtk.nao.ac.jp/~iye/kiban-s.htm