研究課題
本研究で開発したレーザーガイド星補償光学系システムの性能評価を終え、平成23年2月からはすばる望遠鏡の共同利用装置として公開した。平成20年8月から公開した自然ガイド星を用いた補償光学系による共同利用観測で、すばる望遠鏡の空間解像力が近赤外線では10倍に向上したが、レーザーガイド星生成機能を追加できたため、自然ガイド星が無い天域でも補償光学系を利用した観測が可能となり、観測申し込みが急増した。2012年前期では実に全体の40%以上に達した。本研究チームの観測的研究としては、本研究で開発した特殊フィルターを用いて同定した赤方偏移7.3と7.0のライマンアルファ銀河候補天体の分光確認観測を実施し、赤方偏移7.215(129.1億年昔に相当)の銀河SXDF-NB1006-2を発見した。赤方偏移7以上では赤方偏移5.7や6.6の時代と比べて、見える銀河の数が顕著に減少していることから、宇宙再電離の終焉期(宇宙の夜明け)がこの頃に起きたことをより確実に示した。これらの最遠銀河の構造を調べるため、レーザーガイド補償光学系による高解像撮像観測に着手した。また、同フィルターを用いた中間赤方偏移銀河の内部運動や星形成活動の観測的研究を進めた。手前の銀河による重力レンズ効果を受けたクェーサー多重像の観測を、レーザーガイド星補償光学素を駆使して行い、レンズ銀河の姿を初めて撮影することに成功し、その質量と暗黒物質の分布に関する研究結果を発表した。別の二重クェーサーの分光観測から銀河間ガスの研究も進展させた。これまですばる望遠鏡では実施できなかった精密位置測定(アストロメトリ)についても、補償光学系の高解像性能を活かして球状星団の内部運動や固有運動を測定する観測的研究を開始した。本研究全期間の装置開発研究と観測的研究の成果をとりまとめた研究成果報告書を平成24年6月には発表できる見込みである。
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