研究課題
1.単一スピンの量子コヒーレンス (1)傾斜磁場法による単一電子スピン共鳴、及び2重量子ドットの2個の電子に個別のスピン共鳴実験に初めて成功した(報道発表)。続けて、Rabi振動実験にも成功し、Rabi型T2時間は1.sec以上であることを確認した。(2)核スピン制御に関して、重要な物理パラメータである交換エネルギーとバイアス電圧の関係を初めて定量的に評価した。ゆらぎ問題に関しては、縦型2重量子ドットの電荷読み出し法、電子スピン-核スピン間のフリップフロップ結合の検出法を開発した。2,近藤コヒーレンスと超伝導・強磁性の競合 (1)InAs量子ドットについて、昨年度観測したスピン軌道相互作用(SOI)誘起状態分裂の磁場角度依存性を測定し、自己形成ドットに特有な異方的閉じ込めの影響、特定の磁場角度におけるSOI効果の解消、などの重要な知見を得た。(2)超伝導電極と常伝導電極を有するInAsドット試料で、非平衡伝導度測定によりクーパー対伝導に本質的なアンドレーエフ束縛状態の検出に成功した。そのゲート電圧依存性から、基底状態がBCS一重項状態から磁気的二重項状態への相転移、近藤状態とのクロスオーバーなど重要かつ新しい知見を得た。両超伝導電極試料では、近藤温度の大小と超伝導電流の関係(正常接合かπ接合)の詳細を解明中。3.観測による量子コヒーレンスの破れ (1)ABリングと結合細線の結合系を伝播する電子が、"どちらの細線に存在するか"を2状態とする量子ビットとして使えることを実験的に示した。また、ABリングに近接する量子細線に電流を流して量子ビットに人工的なディフェージングが導できることを確認した。(2)量子ドット中の近藤状態が、近接した量子ポイントコンタクトに流れる電流よって破れることを確認した。しかし、これは量子ドット中のスピンデフェージンではなく、電子温度の上昇で説明できることがわかった。
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