研究課題
電界トランジスタ構造を用いた電界誘起物性ではパリレンを絶縁膜とするMoS_2トランジスタを構築し、約1Kの低温で量子抵抗h/e^2以下の抵抗値と金属的な温度依存性を観測し、電界誘起絶縁体-金属転移が実現したと結論した。過去に二次元絶縁体-金属転移が観測されていたSiなどと比べるとはるかに低い移動度(~10^3V/cm^2sec)で絶縁体金属転移が起きている。その物理的起源を重い4d元素であるMoの強いスピン軌道相互作用にあると考察した。抵抗スイッチング素子関係では、SPring-8の放射光ナノビームを用いた伝導フィラメントの実空間直接観測を行った。スピン軌道相互作用(と電界効果)の視点から新たに展開している5dIr酸化物の物性では、磁気X線回折の偏光依存性を用いて、スピン軌道モット絶縁体Sr_2IrO_4の磁気モーメントのスピン成分と軌道成分の分離を行った。大きな軌道成分の存在が確認され、スピン成分と軌道成分のモーメントの比は1:5-1:6と強スピン軌道相互作用の極限(J_<eff>=1/2)の場合に予測される1:4に極めて近い値を得た。値の小さなずれは構造変形によるJ_<eff>=1/2の混成として理解できる。J_<eff>=1/2に極めて近い状態にいることが証明された。磁性体ではスピン軌道相互作用は磁気的異方性の起源であることは良く知られている。単純に考えるとSr_2IrO_4は極めて異方性の強い磁性体になると思われるが、最近Jackeliらによって理論的、スピン軌道相互作用の強いJ_<eff>=1/2の極限では系は二次元S=1/2ハイゼンベルグ系として振る舞うと指摘された。IrL端の共鳴X線回折の実験において、スピンゆらぎに伴う散漫散乱を見出し、その解析から確かに二次元S=1/2ハイゼンベルグ系として振る舞うことを確認した。
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