物性研究において高圧力がもたらす効果は枚挙にいとまがない。物質内の原子間距離を直接的に操作しうる圧力は、結晶構造を変化させるのみならず、これに伴って物質の性質を大きく変える。金属化や超伝導化といった劇的変化がよい例である。常圧力の条件下では超伝導にならない元素も圧力下で超伝導が発現している例がいくつも報告されている。圧力が誘起する量子相転移や、新物質・新機能の創成を目指して高圧下の物性研究が行われてきていた。超高圧力が誘起する超伝導はその極限環境がエキゾチックと思われがちであるが、ありふれた元素を舞台に起こる超伝導現象にこそ「超伝導」理解の本質があると考え、本研究計画を立案した。 高温超伝導の機構解明と室温超伝導の実現につながる物質設計の指針を得ることを目的として元素の超伝導化を追求する。未踏の超高圧力下で室温超伝導が理論予測されている水素の金属化と超伝導化を究極の目標として、超高圧力の発生と低温下での物性測定技術を開発して、元素における超伝導現象の普遍性や可能性を追求する。
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