研究概要 |
[1] ダイナミクス研究@HIMAC:3D-RCEの結晶振動電場の強度や方向ほ,選択する結晶原子面列に依存して一意に決定される。このため,特定の結晶原子面列によって選択的に励起イオンをアラインメントさせることが可能である。それぞれ3D-RCEによってアライメントした励起イオンが結晶原子と衝突してイオン化する際に放出される2次電子の観測に取り組んだ。この2次電子はほぼイオンと等速に前方へ放出されるため,これを磁場型アナライザイーと新たに導入したアバランシェ・フォトダイオードの組み合わせで実験的にとらえることに成功した。この電子の運動量分布は,元来のイオンにおける電子の運動量分布を反映するため,励起イオンからの2次電子はより狭い運動量幅をもつことを確認した。これをアライメントした励起イオンに適応し,その結晶原子との衝突における原子衝突過程の観測のため,様々な実験条件におけるRCEの挙動を観測した。 [2] スペクトロスコピー研究@GSI:平成20年度に進めた国内でのX線検出器,さらにGSI現地におけるゴニオメーターの動作テストといった準備を受けて,実際に高エネルギービームを用いた第1回目の実験を行った。SISシンクロトロンより取り出した核子あたり190MeVのLi-likeウラニウム(U^<89+>)イオンを用い,1s^22s(1/2)準位から1s^22p(3/2)へ励起を脱励起X線を通じて観測することで,高原子数Z=92の多価重イオンに対するラムシフト測定分光実験を実施した。遷移エネルキーは,4.5keVであり,面チャネリング条件下で2次の原子ストリング配列成分を利用した2D-RCEを使って共鳴励起した。4台の大面積(100mm2)シリコンドリフト型Si検出器(SDD)を真空チャンバー内に設置し,高検出効率でDopplerシフトした4-10keVの脱励起X線の収量がRCE条件下において増大する様子を観測した。
|