太陽系初期における原材料物質としての非晶質珪酸塩の加熱結晶化実験を進めた。彗星塵を特徴づけるGEMSの平均組成であるSiO_2に富む非晶質珪酸塩の結晶化のTTT(温度-時間-変態)図を作成し、星周塵として観測されるシリカ鉱物は非晶質珪酸塩の加熱では生成されないことを示した。また、提唱している「ガスからの非晶質珪酸塩の凝縮とその後の結晶化」という星周塵形成モデルに従って、球状形状をもつ非晶質珪酸塩の結晶化実験をおこない、星周で観測されるカンラン石と輝石の空間分布と比較した。 非晶質珪酸塩の水質変成実験を進め、水-岩石比と炭素質コンドライトの化学グループとの関係を示した。また、炭素質コンドライトなどの特徴的に含まれる有機物ナノグロビュールがX線マイクロCT撮影により観察可能であり、有機物ナノグロビュールの3次元形状が分子雲に存在する氷-有機物ダスト起源説を整合的であることを示した。 スターダスト計画によって採取されたWild-2彗星の塵粒子について、エアロジェルへの超高速衝突で形成されたトラックの形成を模擬した室内実験をおこない、衝突トラック形成モデルを精緻化し、彗星塵の平均密度の見直した(0.49±0.18g/cc)。また、国際共同研究により同計画により星間塵粒子が採取された可能性を指摘した。 はやぶさ計画によって採取された小惑星イトカワの微粒子サンプルの初期分析を開始し、反射スペクトルによる比較から予想されていたようにLLコンドライト隕石であることを実証した。また、その3次元形状や希ガス分析などから、これらはイトカワのレゴリス粒子であることを明らかにし(機械的な摩耗作用の発見、レゴリスの年代)、従来しられている月のレゴリスとは大きく異なることを示した。
|