研究概要 |
様々な触媒的不斉合成反応における触媒活性と立体選択性の自在制御の実現を主眼として,本基盤研究では用いる配位子が触媒の活性および立体選択性に与える影響について系統的に調べ,目的の反応に適した不斉配位子の精密設計を目指す.この目的に到達できれば,従来の不斉配位子が十分に機能しない触媒反応においても高度な不斉化が現実のものとなり,様々な有用光学活性化合物の効率的合成が実現できる.また,一連の配位子の性質に関する研究は,触媒的不斉合成の枠にとどまらず,遷移金属錯体化学の分野で非常に有用な知見を与えることにもなる. 平成20年度に得た代表的な研究成果として,(1)[4+2]環化付加反応によるキラルジエン配位子の簡便な合成法の発見,(2)テトラフルオロベンゾバレレン骨格をもつ新しいキラルジエンの合成,(3)ビシクロ[3.3.1]ノナジエン骨格をもつ高立体選択性キラルジエンの設計,(4)有機ホウ素化合物の電子不足オレフィンへの共役付加がロジウム,パラジウムに加えて,白金,ルテニウム触媒でも進行することを発見(5)パラジウム触媒を用いたπ-アリルパラジウム中間体を経て進む不斉環化付加反応の拡張,(6)ロジウム触媒による末端アセチレンのα,β-不飽和ケトンへの新しい不斉共役付加反応,などが挙げられる.またロジウム触媒によるインダノン誘導体の新しい合成法の開発や,ホモアリルアルコールの速度論的分割,においても良好な成果を得た. これらの成果は,アメリカ化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)を含む約20報の論文として発表された.まずまずの研究成果が得られた満足度のできる一年間であった.
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