研究概要 |
様々な触媒的不斉合成反応における触媒活性と立体選択性の自在制御の実現を主眼として,本基盤研究では用いる配位子が触媒の活性および立体選択性に与える影響について系統的に調べ,目的の反応に適した不斉配位子の精密設計を目指す.この目的に到達できれば,従来の不斉配位子が十分に機能しない触媒反応においても高度な不斉化が現実のものとなり,様々な有用光学活性化合物の効率的合成が実現できる.また,一連の配位子の性質に関する研究は,触媒的不斉合成の枠にとどまらず,遷移金属錯体化学の分野で非常に有用な知見を与えることにもなる. 最終年度である平成22年度に得た代表的な研究成果として,(1)テトラフルオロベンゾバレレン骨格をもつ新しいキラルジエンの簡便な合成法の確立と触媒的不斉合成への応用,(2)ロジウム触媒によるβ,β二置換α,β-不飽和ケトンへの有機ホウ素化合物の不斉共役付加反応およびケトン由来のイミンの不斉アリール化による4級炭素をもつケトンおよびアミンの不斉合成,(3)新しい骨格をもつホスフィン-オレフィン型不斉配位子の完成,(4)キラルジエン-ロジウム触媒を用いた置換アセチレンの不斉重合によるらせんポリマーの合成,(5)キラルジエン-ロジウム触媒不斉共役付加による不斉シクロプロパン化反応,(6)キラルジエン-ロジウム触媒を用いたエンイン類の不斉環化異性化反応によるシクロプロパン誘導体の不斉合成,(7)ロジウム触媒不斉共役付加反応の新しい基質としてアルケニルホウ素化合物の適用,などが挙げられる.また光学活性カルベン配位子をもつ銅触媒を用いた新しい不斉反応にも成功した. これらの成果は,13報のJ.Am.Chem.Soc.およびAngew.Chem.Int.Ed.を含む29報の論文として発表された.良好な研究成果が得られた満足度の高い最終年度であった.
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