本年度は昨年度に引き続き、下記に焦点をあてて研究をすすめ、非常に興味深い進展を得ることができた。 High-k/SiO2界面に形成されるダイポールに関するモデルの構築をすすめていたが、それをまとめたものが国際誌に論文化された。これはダイポール形成の駆動力に関するものであり、酸化物界面に一般化できるものと考えている。また、ダイポールの直接検出に関しては、XPSによる界面SiO2中のSiのシフトからその存在を明確に検出することができた。XPSによるダイポール量の絶対値の測定は今のところまだ困難であるが、SiO2上のHigh-k材料の有無、その種類によるSiのシフトから、相対的にではあるがダイポールの存在を直接的に確認したと言える。 各種High-k膜の電子構造に関しては、Au薄膜をHigh-k膜に堆積し、それを接地し、グランドレベルにあるAuを通してXPS測定することによって、Auを参照電位として各種のHigh-k膜の価電子帯端、エネルギーバンドギャップ(光吸収を併用しながら)、さらにはその両者から伝導帯端を決定することができた。この手法もHigh-k材料にかかわらず一般化できるものと考えている。 さらに、非平衡熱処理によるHfO2のHigher-k相の出現を確認することができた。これはHfO2の高温相を熱処理の仕方だけで実現しようというものである。作製された膜の高誘電率の確認までは行っていないが、Higher-k相の出現に関してはかなり系統的に調べることができ、核生成とその安定化という二つの工程を考えることで全体を説明できそうである。Higher-k相の制御手法、あるいはHigh-k膜のプロセス中の質の変化を考える上での基本になるものと考えている。
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