研究課題
ダイヤモンドは物質中最高の熱伝導率や高い絶縁破壊電圧を有しているため、次世代の高周波高出カデバイス材料として期待されている。本年度は実用に耐えうる高出力・高周波ダイヤモンドMOSFETの作製を目的としてきた。そこで主に、1)面方向を選定した基板への微細化技術の適用による高出力・高周波ダイヤモンドMOSFETの作製、2)ダイヤモンドMOSFETの熱的安定性向上と低温での動作確認、3)超伝導FETへの応用に向けて超伝導ダイヤモンドの薄膜化を行った。1)面方位の選定((111)面利用)により、シート抵抗:3kΩ/□以下、キャリア密度:5×1013/cm2の2次元正孔ガスの生成に成功した。また、作製したMOSFETは、0.3μmという比較的長いゲート長であるにもかかわらず、ダイヤモンドMOSFETとしては世界最高のドレイン電流値(850mA/mm)を記録した。この値は最先端のSiCMOSとほぼ同様のドレイン電流密度である。2)PTFEを利用して、約4Kの極低温真空環境下でのダイヤモンドMOSFETのデバイス特性を評価した。結果、PTFEパッシベーション無しの場合では真空中においてシート抵抗が増加するのに対して、パッシベーションをした場合では、真空中においても大気中と同程度のシート抵抗を保持している。また、PTFEパッシベーションによって電極近傍のキャリア密度が増加し、低温真空下でもホール蓄積層と電極間の良好なオーミック接触が維持されているため、本研究で作製したデバイスでは低温真空下でも接触抵抗の低減が維持されている。3)(111)面での高効率ドーピングを利用し、20nmという薄膜で超伝導転移する低抵抗の高濃度ボロンドープ薄膜の合成に成功した。2)の結果である低温真空下での動作と薄膜での超伝導転移により、超伝導FETへの応用に期待が高まった。
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