研究概要 |
1.ダイヤモンドFET構造最適化による高耐圧、高周波、耐環境性能向上 水素終端(111)面での高キャリア密度をソース・ドレイン・チャネルに利用したMOSFETでは800MA/mmと高いドレイン電流密度が得られた(論文1)。さらにソース・ゲート、ゲート・ドレイン間の抵抗減少にて最大ドレイン電流密度1.2A/mm、最大相互コンダクタンス400mS/mmとダイヤモンドでは最高で、シリコンや化合物半導体の先端FETに匹敵する値を記録した(学会8)。この電流駆動能力の上昇を、高電界下での軽い正孔から重い正孔への遷移が(111)面では抑制され、移動度低下が起こりにくいことで説明した(論文1)。 2.高濃度ボロンドープ超伝導層を利用したダイヤモンド超伝導デバイス開発 2.1 SNSジョセフソン接合 超伝導層/非超伝導層/超伝導層(SNS)を縦型(論文5)あるいはプレーナ構造で形成し、ダイヤモンドジョセブソン接合形成に世界で初めて成功した(論文5)。3層全て同一物質のホモ接合で形成したジョセフソン接合は例がなく、ダイヤモンドという安定物質から高い信頼性が期待される。プレーナ構造では臨界電流Icと常伝導接合抵抗Rnの積(IcRn積,16mV@2K)がMgB2よりも高く、特性振動数(2eIcRn/h)が上昇し、テラヘルツ帯での応答が期待される。 2.2超伝導基礎物性から超伝導FETへ ボロンドープダイヤモンド超伝導の基礎物性に関し、超伝導転移の臨界ボロン濃(3E20cm-3)と臨界キャリア濃度(4E20cm-3)(論文3)、超伝導ギャップ(学会4,7,10)等の観測を行った。ホモエピタキシャル層200mm以下は、圧縮面応力下の無欠陥領域であり、この領域で再現性よくゼロ抵抗温度TC10K台が得られた。この層を利用し、FET構造とジョセフソン接合を組み合わせ、超伝導FETを実現する予定である。
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