研究概要 |
(1) 腸管系ウイルス吸着タンパク質の分離 腸管系ウイルスの中で遺伝子多様性の高いノロウイルスについて, 環境中から検出したウイルスカプシドタンパク質のアミノ酸配列を解析した。同じ遺伝子型(GII/4)に属するノロウイルスの遺伝子間でも, アミノ酸配列に多様性が見られたが, 遺伝子配列よりもその多様性は低かった。さらに, アミノ酸配列の変異が時系列的に蓄積していることを発見した。これはウイルス吸着タンパク質の吸着箇所を選択する上で非常に重要な知見である。 (2) 酵素を用いた固体試料からのウイルス誘出手法(EVE法)の開発 カキ中腸腺からのウイルス誘出手法開発について, 消化前後の試料中の消化対象有機物量を測定し, 酵素による分解の程度を評価した。また, 環境中でウイルスを蓄積したカキ試料を用いて, 酵素を用いない既存の誘出手法とEVE法の検出効率を評価し, EVE法の方がより高い検出感度を示す事を確認した。 さらに, EVE方を用いた流入下水からのウイルス誘出手法の開発に向け, 既存の手法の検出感度を比較した。その結果, 超遠心分離法とPEG沈殿法の検出感度が高かったが, 汎用性, 拡張性の面を考慮すると, PEG沈殿法が最も適していることが示された。 (3) 環境試料中のウイルス遺伝子同定技術開発 エチジウムモノアザイドを用いたPCR法によるRNAウイルス検出法を開発した。EMA処理ではウイルスの活性が低下しないことを確認し, また熱処理による不活化操作を加えることでウイルスRNAの検出量が減少することを確認した。以上より, EMA-PCR法により感染力を持つウイルスのみを検出することができる可能性が示された。
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