研究概要 |
(1)腸管系ウイルス吸着タンパク質(EVBP)の分離 活性汚泥からのタンパク質抽出方法の検討を行い,さらに抽出タンパク質中のEVBPの存在をELISA法により確認した.活性汚泥からのタンパク質抽出方法として,1M尿素及び0.5%(v/v)Triton-Xを含む20mM Tris-HClバッファー(pH8.0)を活性汚泥1g当たり2mlの割合で添加し,超音波処理及び遠心分離後に得られた上清を5μmのフィルターでろ過したものを抽出タンパク質溶液とする手法を確立した.さらに,上記の方法で抽出したタンパク質中にEVBPが存在することを,ポリオウイルス粒子を用いたELISA法によって確認した. (2)酵素を用いたウイルス誘出法(EVE法)によるウイルス回収技術の開発 2008-2009シーズンの養殖カキを毎週採取し,EVE法を用いてノロウイルスおよびエンテロウイルスの回収・定量を行った。ノロウイルス検出頻度上昇と対象地域の胃腸炎患者数の上昇には約1ヶ月のずれが見られ,また患者検体とカキ試料から主に検出されたノロウイルスの遺伝子型が異なるなど,対象地域のノロウイルス感染症患者の発生状況とカキ中のノロウイルスの存在とは異なる傾向を示した。 また,下水からのウイルス回収技術として,PEG沈殿法で得るペレットにリパーゼによるEVE法を加える手法(PEG-EVE法)を開発した。本手法は既存の手法の中で最も回収率の高かったPEG沈殿法単独より添加ウイルスの回収率が約3倍高く,下水試料からのウイルス誘出技術として優れていることが示された。 (3)ウイルス遺伝子検出・同定技術の開発 昨年度開発したエチジウムモノアザイドを用いたウイルス活性評価手法(EMA-PCR法)をポリオウイルスの塩素不活化試験に対して適用し,PCR法と比較してウイルスの活性低下をより正確に評価できることを実証した。
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