研究概要 |
本研究は,『材料磁気科学』の基礎を確立し学問体系を構築するとともに,“磁場効果・磁場機能"を実用材料技術へ応用展開するための先導的研究を行うことを目的としている,当該年度は,材料磁気科学の基礎に関する以下の実験研究を行った. 1.磁場作用下における固体内の拡散:前年度までに見出された鉄中の炭素の拡散に対する磁場の影響の起源についてデュアルオキュバンシーモデルに基づいて検討した.磁場印加によって生じる磁歪に起因して,炭素原子の八面体格子位置の占有確率が高くなることが拡散速度の低下の原因である可能性が高いことを明らかにした. 2.磁場作用下における再結晶・粒成長:Fe-Sn,Fe-P,Fe-Cu合金を用いて,再結晶および粒成長に及ぼす磁場の影響について調査した.圧延後の再結晶,その後の粒成長過程を連続的に観察した結果,いずれの試料においても磁場の印加により再結晶が遅れ,平均粒径が無磁場再結晶試料に比べて小さくなった.これに対して,再結晶完了後の粒成長過程においては,磁場が粒界移動の駆動力として作用し粒成長を促進するため,逆に無磁場試料よりも粒径が大きくなることが明らかとなった.また,磁場の印加により粒径分布が均一になった. 3.粒界ぬれ性に対する磁場の影響:粒界構造を制御したFe-Si双結晶を用いてFe(Si)粒界へのZnのぬれ現象を観察した.磁場印加によりZnの粒界浸透深さが小さくなることが見出された.磁場印加により液体金属脆化の制御が可能であることを示唆している. 4.EELSを用いた粒界磁気モーメントの測定:純鉄を用いてEELSのホワイトラインの比L_3/L_2より磁気モーメントを測定した.粒界において粒内よりも磁気モーメントが高くなる傾向があることが見出された.
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