Pt系自動車触媒に酸素放出吸収剤(助触媒)として混合されるCeO_2-ZrO_2系粉末は、x(CeO_2)=0.5近傍が基本組成であり、安定-準安定相間での酸素の速やかな移動現象を利用している。パイロクロア(pyro.)安定相Ce_2Zr_2O_7を酸化すると、Ce、Zrイオンの規則配置を保ったまま酸素イオンが挿入されて熱力学的に準安定なκ-CeZrO_4相となる。しかしκ相は準安定であるため耐熱性に劣り、1050℃以上では二相に分解する。 本研究では母相の候補として、陽イオンが不規則混合したCaF_2あるいはCaF_2類似構造相を探索し、その安定相中に安定/準安定ナノ空間を創生する原理について探求する。酸素イオンの侵入により生じる準安定相と構造が酷似するCaF_2類似安定相の微細混合により、準安定→安定なる相変化の抑制をはかる。酸素の移動パスと吸収供給源が分担された二相混合状態は低温での酸素放出吸収に有利であり、ハイブリッドエンジンなど自動車排ガス低温化の流れにも対応する。最終的には200℃以下での酸素の放出吸収、あるいは400℃以下でのメタンによる水蒸気改質など、低温で作用する高速反応場を供する。
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