研究課題/領域番号 |
19107007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山極 壽一 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60166600)
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研究分担者 |
中務 真人 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00227828)
中川 尚史 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70212082)
木村 大治 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (40242573)
中村 美知夫 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (30322647)
藤田 志歩 山口大学, 農学部, 助教 (90416272)
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キーワード | 霊長類学 / 生態人類学 / 先史人類学 / 資源利用 / 葛藤 / 所有 / 闘争回避 / 進化 |
研究概要 |
本研究は、霊長類学、生態人類学、先史人類学の3つの異なる学問分野から、人類が示す資源利用とそれをめぐる闘争回避の方法を検討することを目的としている。本年度は、まずケニアで実施した霊長類の化石発掘とその分析から、約1000万年前に生息していたオナガザル類は森林に適応しており、ヒト上科霊長類と食物をめぐる競合関係にあったことを示唆する証拠を発見した。ニホンザルでは環境の異なる金華山と屋久島の比較から、性競合に基づく行動上の変異を発見し、それが社会関係や構造上の違いに結びついていることを示唆した。また、ガボンとコンゴ民主共和国で継続しているゴリラとチンパンジーの食性や土地利用の分析から、両種が好む果実ではなく、果実が減少した際に食べる補助食物がニッチ分割に重要であり、両種の分化と同所的共存に大きな役割を果たしたことを指摘した。ゴリラとチンパンジーでは食物や性交渉の相手をめぐる葛藤の解決法が異なっており、特にチンパンジーでは離合集散にともなうコミュニケーションが発達している。本年はウガンダのカリンズで発情メスをめぐるオス間のコミュニケーションを、タンザニアのマハレではメス間の交渉について直接観察による調査を行った。ガボンとウガンダでは、糞中のホルモンを採取し、それぞれゴリラとチンパンジーの生理状態やストレスレベルの変動を明らかにした。狩猟採集民の調査はカメルーンで実施し、近隣に住む農耕民との資源利用をめぐる葛藤やその解決法を日常会話の分析をもとに検討した。エチオピアの農村社会では、援助食糧をめぐるコミュニティ内での緊張関係の高まりを二次配布や交換によって回避していることを明らかにした。これらの霊長類と人類の葛藤のあり方には物と者の所有が大きく関係していると考えられたため、日本人類学会進化人類学分科会で「人間の経済からヒトの経済へ-モノをめぐる場・感情・関係-」と題するシンポジウムを開催し、他分野からも研究者を招いて検討した。
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