研究課題
基盤研究(S)
Alternaria alternataは本来腐生的な糸状菌であるが、本菌にはそれぞれ異なる作物に病気を引き起こす7つの病原性系統(病原型)が存在する。これら病原型の植物寄生性は、宿主植物にのみ毒性を示す菌の2次代謝産物(宿主特異的毒素)によって決定されている。したがって、7つの病原型は、腐生的A.alternataがそれぞれ固有の毒素生産能を獲得することによって病原菌化したと考えられ、病害発生の根本現象である"腐生菌からの病原菌誕生(寄生性進化)"を研究するための好適なモデルである。先に、5つの病原型から毒素生合成遺伝子クラスターを単離するとともに、それらクラスターが小型(<2.0Mb)のconditionally dispensable(CD)染色体にコードされていることを見出した。CD染色体とは、生存には必要ではないが、植物寄生など特定の生活環にのみ必要な染色体を意味する。CD染色体が最初に報告された生物は、エンドウに感染する糸状菌Nectria haematococca(エンドウ根腐病菌)であり、A.alternataは2例目である。本研究では、A.alternata病原菌のうち、基本構造が異なる毒素を生産するイチゴ黒斑病菌(AF毒素生産菌)、リンゴ斑点落葉病菌(AM毒素生産菌)、トマトアルターナリア茎枯病菌(AAL毒素生産菌)のCD染色体について、それらの構造と機能を植物病理学的、分子系統学的視点から比較解析し、A.alternata病原菌の植物寄生性を決定するCD染色体の実体解明を目指す。具体的には、3病原菌のCD染色体の塩基配列の決定と構造比較、CD染色体遺伝子群の分子系統学的解析、CD染色体遺伝子群の発現解析と7つの病原型と非病原性菌株における分布調査、毒素生合成遺伝子群の同定などによって、CD染色体の構造と機能を総合的に解析する。さらに、プロトプラスト融合、菌糸融合によるCD染色体の種内さらに種間移動の可能性を検証する。
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